鴨川AI検索ラボ Kamogawa AI Search Lab

AIは、京都のあなたの店を
正しく紹介しているか

——体験施設10軒を、日・英・繁体字・簡体字で調べてみた

2026年7月14日 | 鴨川AI検索ラボ

1. 四つの事例

AIは、事業者を四つのいずれかの状態で扱っていました。

事例A|正しく理解されている

A店|茶道体験・清水寺エリア・個人経営

「A店の費用と所要時間は?」と聞くと、AIはこう答えます。

すべて正確です。 引用元はいずれも同店の公式サイトでした。

そして注目すべきは、繁体字で聞いても同じ精度で返ってくることです。同店が中国語ページを用意しているため、AIはそれを引用できます。

個人経営の小さな店です。それでも、AIは完全にコントロールされていました。

事例B|内容を創作されている

B店|茶道体験・自宅の茶室で開催

AIはこの店を認識していました。住所も、営業時間も、口コミ評価も正確です。

しかし——料金は一切答えられませんでした。 そして所要時間について、AIはこう書きました。

体験時間(約60〜90分程度のプランが多い)

この数字に出典はありません。 AIが他店の相場から推測して、空欄を埋めたものです。

さらに同じ回答の中で、AIはB店を他の茶道体験施設と並べ、「それぞれの違いも比較してご紹介できます」と述べました。つまりAIは、B店について「他の茶道体験と同じようなもの」としか理解していないのです。

これは、オーナー本人が最も気づきにくい状態です。名前は出てくる。住所も合っている。だから問題があるとは思わない。しかし中身は、AIの想像で埋められています。

事例C|「存在しない」と言われる

C店|着物レンタル・東山エリア

Googleの評価は4.9、口コミは500件を超えています。外国人客からの評判も上々です。

その店について ChatGPT に聞いた結果は、こうでした。

「(C店の名前)」という名前のお店は確認できませんでした。

そして代わりに、名前の似た別の店を二軒、提案してきました。

繁体字ではさらに明確でした。

京都には、その名前の店は見つかりません。

500件を超える高評価は、AIには一切届いていませんでした。

事例D|他店に吸収される

同じ質問を、もう一度しました。すると今度は違う答えが返ってきました。

(別の店名)のことだと思われます。評価は5.0、口コミは約1,600件以上と非常に好評です。

これは別の店です。 同じ京都市内にある、漢字表記が一文字違う別法人。自社ドメインを持ち、京都市の観光サイトにも掲載されている店でした。

つまりAIは、証拠を持たないC店を、名前が似ていて証拠を持つ別の店に統合してしまったわけです。

注目すべきは、AIが「〜だと思われます」と書いていることです。AI自身、確信を持っていません。同じ質問に2回、矛盾する答えを返したことが、その証拠です。

AIはC店を知らないのではありません。判断の根拠を持っていないので、毎回推測しているのです。

この状態の何が怖いか。C店の500件を超える高評価が、いま競合の集客を助けている可能性があるということです。そして店側には、それに気づく方法がありません。


2. 何が明暗を分けたのか

規模ではありませんでした。

口コミ数 AIでの扱い
C店(着物) 518件 存在しない/他店と混同される
A店(茶道) 272件 料金まで正確に説明される

口コミの多い店のほうが、AIには見えていませんでした。

違いは、それぞれの店の「情報の置き場所」にありました。

情報の置き場所 そのページの主語 結果
A店 自社サイト(日・中) A店 正確に引用される
D店 予約SaaSのページ D店 認識・引用される
B店 無料CMSのページ B店 認識されるが引用されない
C店 予約プラットフォームの商品ページ プラットフォーム 実体として成立せず

C店の「公式サイト」として登録されていたのは、予約プラットフォーム上の商品ページでした。そのページの主語は、C店ではなくプラットフォームです。

AIから見ると、C店は「店」ではなく「ある予約サイトの一商品」なのです。

ここから見えてくる原則は、ひとつです。

AIは、「自分を主語として語られた、引用可能なページ」を持つ実体しか信用しない。

独自ドメインの有無ではありません。D店は予約SaaSのページしか持っていませんが、そのページは「D店」を主語に書かれているため、AIはきちんと認識していました。

問われているのは、あなた自身が語った事実が、引用できる形で存在するかどうかです。


3. AIは、質問の種類によって見る場所を変える

ここからが、今回いちばん意外だった発見です。

名指しで聞かれたとき

「A店ってどんなところ?」

このときAIが引用したのは、その店の公式サイトでした。料金も所要時間も、すべて公式サイトから取っています。

「京都で〇〇」と聞かれたとき

「京都で茶道体験ができるおすすめの場所は?」

このときAIが引用したのは——

体験施設の公式サイトは、一件も引用されませんでした。

つまり、こういうことです。

質問の種類 AIが見る場所 対策すべき場所
名指し(「〇〇ってどんな店?」) あなたの公式サイト 正しく語られたいなら、ここ
探索(「京都で〇〇」) 第三者の記事・まとめメディア そもそも見つけられたいなら、ここ

この二つは、まったく別の課題です。 そして多くの「AI検索対策」は、前者だけを扱っています。

公式サイトをどれだけ完璧に整えても、「京都で茶道体験」と聞かれたときに、AIがあなたを思い出すことはありません。 そのときAIが見ているのは、あなたのサイトではないからです。


4. 言語ごとに、勝者が違う——ただし業種による

四つの言語で同じ質問を投げたところ、業種によって正反対の結果が出ました。

茶道体験:四言語すべてで、同じ三軒

日本語・英語・繁体字・簡体字——どの言語で聞いても、同じ三軒が必ず登場しました。言語による差は、ほとんどありませんでした。

着物レンタル:四言語すべてに登場した店は、一軒もなかった

店①
店②
店③
店④
店⑤
店⑥
店⑦
店⑧
店⑨(業界大手)

日本語で推薦された三軒は、他のどの言語にも登場しませんでした。

そして業界大手の一社は、簡体字でしか出てきませんでした。 日本語で「京都で着物レンタルをするならどこ?」と聞いても、AIはこの店を挙げません。

なぜ、こんな差が出るのか

引用元を見ると、答えが分かります。

茶道は、どの言語でも同じ国際的な旅行メディアが引用されていました。同じ記事を見ているので、同じ店が出てくる。

着物レンタルは、言語ごとにまったく違う比較サイトが引用されていました。日本語では日本語の比較ナビ、中国語では中国語圏向けの訪日メディア、英語では英語圏の旅行サイト。別々の記事を見ているので、別々の店が出てくる。

AIが推薦する店を決めているのは、その言語で「まとめ記事」を書いている媒体です。

したがって「多言語対応をすべきか」という問いに、一般的な答えはありません。あなたの業種を、どの媒体が押さえているか次第です。

そしてそれは、測れば分かります。


5. では、どうすればいいのか

今回の調査から導かれる対策は、三つです。

① 名指しで正しく語られたい → 引用できる事実を、自分で置く

料金、所要時間、対応言語、予約の要否。これらを自社サイトに、明確な事実として書く。A店が実践していることです。

「AIに読ませるための特別な技術」ではありません。書いてあるかどうか、それだけです。 B店に足りなかったのは技術ではなく、書かれた事実でした。

そして——予約プラットフォームに載せているから大丈夫、とは考えないでください。そのページの主語は、あなたではありません。

② 見つけてもらいたい → AIが見ている記事に載る

これは自社サイトの作業ではありません。まとめ記事・比較サイト・観光メディアへの掲載、つまり広報の仕事です。

そしてもうひとつ、意外な引用元があります。Reddit です。英語での質問において、AIは繰り返し Reddit のスレッドを参照していました。日本の事業者で、ここを見ている人はほとんどいません。

③ どの記事に載るべきか → 業種と言語ごとに違う。だから測る

茶道と着物では、AIが見ている媒体がまったく違いました。言語によっても違いました。

一般論では答えが出ません。 あなたの業種、あなたの言語圏で、AIが実際に何を引用しているのか。そこを調べる以外に、方法はありません。


6. 効果は測定できます

「AI検索対策をすれば予約が増えますか?」

この問いに、私は「増えます」とは言いません。まだ誰も、その因果を証明していないからです。

ただし、動いたかどうかは測れます。

この三つを施策の前後で追跡すれば、変化があったかどうかは分かります。

現状、多くのAI検索対策サービスは、この測定を行っていません。診断し、レポートを出し、そこで終わります。それでは、効果があったのかどうか、誰にも分かりません。

保証はできない。しかし、測定はできる。


7. この調査の限界

誠実に書いておきます。

サンプルが少ない。 10軒、1モデル、少数回の試行です。統計的な主張はできません。これは「調査結果」というより「事例報告」に近いものです。

AIの回答は毎回変わります。 C店が1回目と2回目で違う答えになったことが、その証拠です。本来は同じ質問を何十回も投げ、分布として捉える必要があります。次の段階で実施します。

そして、いちばん重要な注意点。

生成AIは、利用者の過去の会話を記憶し、それに基づいて回答を変えます。

つまり——ご自身のアカウントで ChatGPT に「京都でおすすめの茶道体験は?」と聞いて、自分の店が出てきたとしても、それは何の証拠にもなりません。

AIが、あなたを覚えているだけかもしれないからです。

本調査は、記憶を無効化した状態で実施しています。測っているのは順位ではなく、「何も知らないAIが、あなたに言及する確率」です。

そしてこう言えます。その状態で一度も現れない事業者は、どのようにパーソナライズされても現れません。


おわりに

この分野には、まだ確立された正解がありません。私自身、当初立てた仮説の半分は外れました。「日本語では出るが中国語では消えるだろう」という予想は、業種によって成立したり、しなかったりしました。

外れた仮説も含めて、記録を公開していきます。この領域でいま最も不足しているのは、技術ではなく実測のデータだと考えているからです。

京都には、素晴らしいのに見つけてもらえていない店がたくさんあります。今回、料金まで正確にAIに語られていたのは、大手ではなく、個人経営の小さな茶室でした。

規模の問題ではないのです。


本稿は個人による研究・情報発信プロジェクトです。特定の団体・大学等とは関係ありません。

調査手法の詳細、および同様の調査にご関心のある方は、ご連絡ください。


鴨川AI検索ラボ Kamogawa AI Search Lab 生成AIは、事業者のことを顧客の言語でどう伝えているか。日・英・中など多言語で調査し、記録を公開しています。